×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
夜。人気のない通りに影がひとつ。
遠くで犬が吠え、近くでは猫が走り去って行った。
住宅街の割に人の気配がないのは、もう時刻が深夜を回っているからだ。
きれいに刈り込まれた木々は黒く染まり、月が地面を白く照らす。
遠吠えが止むと、聞こえるのは自分の足音だけだ。
電灯の少ない道。見通せる限りには2つあり、奥の方はゆっくりとした速度で点滅している。
それを通り過ぎると、今度こそ何もない道にでた。空を見上げた。
道が一本しか違わないというのに随分と星がよく見える。星の瞬きの音が聞こえる。
それくらい静かだった。
また路地を曲がる。今日はいつもの駅よりひとつ前で終電となってしまった。金がないので仕方なくここまで歩いているのだが、足取りは重く、だらだらとかなりの回り道をしている。
どうせ家には誰もいないしなと、一人暮らしの気楽さと一抹の寂しさを噛みしめ、また路地を曲がる。
少しきつめの坂を上り終える。公園があった。昼間こそ子ども達の笑い声が聞こえるが、今は誰一人としていない。砂場とブランコしかない公園。その隅にあるベンチに腰掛ける。ギシッ。ベンチの少しの軋みさえ響く。
高台というほどではないが、振り返れば眠りに就いた街が見渡せる。
もう遠くの方は薄明るくなってきている。
それでも、街灯の少ない田舎町はまだ多くの黒を抱えていた。
ふと、右下を見下ろした。何か蠢いた気配があったからだ。
見ると視線を投げた位置よりもずっと奥に、何か黒い影が、いた。
何の影だかわからない、他の影よりもはるかに黒い、影。
それがペッタリと地面に張り付いてさえなければ、私はただのボロ切れとでも思っていたに違いない。
影はピクリともしない。だが、私のどこか奥底が囁いていた。先ほどの気配はアレなのだと。
どのくらいの時間見つめていただろうか。長い時間に感じられたが、せいぜい冷や汗が一筋流れ落ちたほどの間だった。
影が、動いた。いや、動いたのではない。それはゆっくりと、端からすうっと浮き上がり、影から靄へと変わっていった。すっかり変わり終えると、今度は球体へとまとまっていった。
もやもやとしている割に、真黒なソレの後ろは見えない。かなりの密度なのだろう。
この距離では一瞬吹き出される煙が無い限り、つるつるとした見事な球体にしか見えなくなっていた。
しばらく見ていると、黒い靄の中に小さな白い靄が現れた。その靄も次第に球体へと変化していく。
目だった。
白い靄がまとまりきったかと思った瞬間だった。目玉がこちらを向いた。見られた。目を逸らすことができない。
ドクン。
自分の心臓の音ではっと気がついた。吹いた風の冷たさで、自分の体が汗でぐっしょりと濡れていることがわかる。
逃げなければ。じりじりと後づさる。目玉はまだこちらをみている。黒い靄自体は動かないままだ。黒い部分は光を反射せず、ただ黒とのみ視覚は認識するだけだ。
そのせいで目玉の異様さがより強調されている。
ざっ。地面が砂っぽくなった。砂場の所までたどり着いたらしい。
公園の半分まではきたようだ。このまま何も起きないでくれ。
そう願いつつ少し速度を速める。だいぶ距離がとれたが、向こうはまだ動かない。
その時だった。
遠くで犬が吠え、近くでは猫が走り去って行った。
住宅街の割に人の気配がないのは、もう時刻が深夜を回っているからだ。
きれいに刈り込まれた木々は黒く染まり、月が地面を白く照らす。
遠吠えが止むと、聞こえるのは自分の足音だけだ。
電灯の少ない道。見通せる限りには2つあり、奥の方はゆっくりとした速度で点滅している。
それを通り過ぎると、今度こそ何もない道にでた。空を見上げた。
道が一本しか違わないというのに随分と星がよく見える。星の瞬きの音が聞こえる。
それくらい静かだった。
また路地を曲がる。今日はいつもの駅よりひとつ前で終電となってしまった。金がないので仕方なくここまで歩いているのだが、足取りは重く、だらだらとかなりの回り道をしている。
どうせ家には誰もいないしなと、一人暮らしの気楽さと一抹の寂しさを噛みしめ、また路地を曲がる。
少しきつめの坂を上り終える。公園があった。昼間こそ子ども達の笑い声が聞こえるが、今は誰一人としていない。砂場とブランコしかない公園。その隅にあるベンチに腰掛ける。ギシッ。ベンチの少しの軋みさえ響く。
高台というほどではないが、振り返れば眠りに就いた街が見渡せる。
もう遠くの方は薄明るくなってきている。
それでも、街灯の少ない田舎町はまだ多くの黒を抱えていた。
ふと、右下を見下ろした。何か蠢いた気配があったからだ。
見ると視線を投げた位置よりもずっと奥に、何か黒い影が、いた。
何の影だかわからない、他の影よりもはるかに黒い、影。
それがペッタリと地面に張り付いてさえなければ、私はただのボロ切れとでも思っていたに違いない。
影はピクリともしない。だが、私のどこか奥底が囁いていた。先ほどの気配はアレなのだと。
どのくらいの時間見つめていただろうか。長い時間に感じられたが、せいぜい冷や汗が一筋流れ落ちたほどの間だった。
影が、動いた。いや、動いたのではない。それはゆっくりと、端からすうっと浮き上がり、影から靄へと変わっていった。すっかり変わり終えると、今度は球体へとまとまっていった。
もやもやとしている割に、真黒なソレの後ろは見えない。かなりの密度なのだろう。
この距離では一瞬吹き出される煙が無い限り、つるつるとした見事な球体にしか見えなくなっていた。
しばらく見ていると、黒い靄の中に小さな白い靄が現れた。その靄も次第に球体へと変化していく。
目だった。
白い靄がまとまりきったかと思った瞬間だった。目玉がこちらを向いた。見られた。目を逸らすことができない。
ドクン。
自分の心臓の音ではっと気がついた。吹いた風の冷たさで、自分の体が汗でぐっしょりと濡れていることがわかる。
逃げなければ。じりじりと後づさる。目玉はまだこちらをみている。黒い靄自体は動かないままだ。黒い部分は光を反射せず、ただ黒とのみ視覚は認識するだけだ。
そのせいで目玉の異様さがより強調されている。
ざっ。地面が砂っぽくなった。砂場の所までたどり着いたらしい。
公園の半分まではきたようだ。このまま何も起きないでくれ。
そう願いつつ少し速度を速める。だいぶ距離がとれたが、向こうはまだ動かない。
その時だった。
PR
comment
admin/write
カウンター
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
おきにいり
ブログ内検索
ピクシブランキング
ここに載るのが目標。