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機械と宵闇のワルツ1
2010.10.06 Wed 00:41
そんなこんなではじまりはじまり

長いので小説は毎回たたみます。

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 夜。人気のない通りに影がひとつ。
遠くで犬が吠え、近くでは猫が走り去って行った。
住宅街の割に人の気配がないのは、もう時刻が深夜を回っているからだ。
きれいに刈り込まれた木々は黒く染まり、月が地面を白く照らす。
遠吠えが止むと、聞こえるのは自分の足音だけだ。
 電灯の少ない道。見通せる限りには2つあり、奥の方はゆっくりとした速度で点滅している。
それを通り過ぎると、今度こそ何もない道にでた。空を見上げた。
道が一本しか違わないというのに随分と星がよく見える。星の瞬きの音が聞こえる。
それくらい静かだった。 
 また路地を曲がる。今日はいつもの駅よりひとつ前で終電となってしまった。金がないので仕方なくここまで歩いているのだが、足取りは重く、だらだらとかなりの回り道をしている。
どうせ家には誰もいないしなと、一人暮らしの気楽さと一抹の寂しさを噛みしめ、また路地を曲がる。
少しきつめの坂を上り終える。公園があった。昼間こそ子ども達の笑い声が聞こえるが、今は誰一人としていない。砂場とブランコしかない公園。その隅にあるベンチに腰掛ける。ギシッ。ベンチの少しの軋みさえ響く。
高台というほどではないが、振り返れば眠りに就いた街が見渡せる。
もう遠くの方は薄明るくなってきている。
それでも、街灯の少ない田舎町はまだ多くの黒を抱えていた。
 ふと、右下を見下ろした。何か蠢いた気配があったからだ。
見ると視線を投げた位置よりもずっと奥に、何か黒い影が、いた。
何の影だかわからない、他の影よりもはるかに黒い、影。
それがペッタリと地面に張り付いてさえなければ、私はただのボロ切れとでも思っていたに違いない。
影はピクリともしない。だが、私のどこか奥底が囁いていた。先ほどの気配はアレなのだと。
 どのくらいの時間見つめていただろうか。長い時間に感じられたが、せいぜい冷や汗が一筋流れ落ちたほどの間だった。
 影が、動いた。いや、動いたのではない。それはゆっくりと、端からすうっと浮き上がり、影から靄へと変わっていった。すっかり変わり終えると、今度は球体へとまとまっていった。
もやもやとしている割に、真黒なソレの後ろは見えない。かなりの密度なのだろう。
この距離では一瞬吹き出される煙が無い限り、つるつるとした見事な球体にしか見えなくなっていた。
 しばらく見ていると、黒い靄の中に小さな白い靄が現れた。その靄も次第に球体へと変化していく。
目だった。
 白い靄がまとまりきったかと思った瞬間だった。目玉がこちらを向いた。見られた。目を逸らすことができない。
 ドクン。
 自分の心臓の音ではっと気がついた。吹いた風の冷たさで、自分の体が汗でぐっしょりと濡れていることがわかる。
逃げなければ。じりじりと後づさる。目玉はまだこちらをみている。黒い靄自体は動かないままだ。黒い部分は光を反射せず、ただ黒とのみ視覚は認識するだけだ。
そのせいで目玉の異様さがより強調されている。
 ざっ。地面が砂っぽくなった。砂場の所までたどり着いたらしい。
公園の半分まではきたようだ。このまま何も起きないでくれ。
そう願いつつ少し速度を速める。だいぶ距離がとれたが、向こうはまだ動かない。
 その時だった。
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