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どのくらいの時間、どのくらいの距離を移動したのかは私にはわからなかった。
船酔いでも車酔いでもない、新たな乗り物酔いを経験していることも、頭が痛みでぼやけていてよくわからない。ひどく緩慢とした速度で目を開いてみるも、視界がぼやけていて、わかることはやけに明るい部屋にいるということだけだ。
体の感覚が戻ってきた。ベッドの上に寝かされているのか、それにしても妙にふかふかとしている。カッ、カッ、カッ…。何かが近づいてくる音がする。
「・・連れて・・・・かい。じゃあ・・・・」
微かに声が聞こえる。体を何とか起こすと、自分がソファに寝かされていることがわかった。
白い部屋だった。目の前には大きなテーブルがあり、それを中心に小さな机が群れのように集まっている。その上にはごちゃごちゃと書類が積み重なっている。
そこに埋もれているパソコンも壁にかかっている時計も、およそ部屋にあるもの全てが白で統一されていた。まるで統一することでその中に何かを隠そうとしているかのようだ。
乱雑で、混沌としているのに、そこには確かに調和があった。
カチャ。音がしてようやくそこにドアがあるということに気がついた。
ドアノブまで真っ白なドアは、壁に切れ込みを入れたように開いた。
そこから白衣を着た男が現れた。髪は黒い。その後ろからちらちらと赤紫が見える。
「いやぁ災難だったねぇ。色々と」
久々にお客が来たと、かなり不穏な一言を残しながら、そいつは私の側にあった椅子に腰かけた。
「コーヒーと紅茶はどちらが好みかい?それともジュースのほうがいいのかな?」
くすくすと笑いながら、自分のコーヒーマグを揺らす。中の黒い液体が異様な存在感を放つ。
光を吸い込んでしまう黒。それは何かを思い出させるようで…。
「それにしても、あんな時間にうろついているなんて珍しい人だねぇ。何か面白いことでもあったの?」
くるくると椅子を回すことを止めたそいつはこちらを見てきた。目が合う。何も言わないでいると、
「ああ!君、怪しんでいるね?無理もないけどさぁ。僕は左藤っていうんだ。人偏のない左藤。ここでロボットについて研究している。一人でね」
「あの…。」
「ん?あぁ、やっぱりコーヒーがいいかな?」
マゼンタ頼むよ。と、後ろに控えていたおかっぱに言った。どうやら赤紫の名前は“マゼンタ”というらしい。そのまんまだな。
「…だからぁ。主人じゃなくて博士って呼んでほしいって言ってるでしょ」
「名称変更を行いますか?パスワードを入力…」
「キャンセル。いいからコーヒー淹れてきなさい」
了解。と言ってマゼンタはドアへ向かった。
「あの…」
「あ、やっぱ紅茶がよかった?」
「それはいいんですけど。何やってたんですか」
「何って。呼び方変えてもらおうとしただけじゃないか」
「…法律で個人の呼称・命令遂行範囲の設定などはパスをつけて管理することになっています。パスなしにそれらを変えることなんてできませんよ」
「知ってるけど?」
「…それならなんであんな無駄なことを…」
ふうんと言って左藤は足を組みなおした。ゆっくりと一口コーヒーを飲む。
「君はロボットの学習能力って信じてる?」
前屈みになり、下から見上げてくる目線は好奇心でキラキラしている。けれども私はその目を見て、何故かロボット達のガラスの目を思い出した。
「僕はね、信じているんだ。実験の一つだよ。」
マゼンタが戻ってきた。目の前に出されたコーヒーを私は受取ったまま持て余す。
「プログラムは感情を生み出すのかってことさ」
そういってマグをマゼンタの持つ盆に置いた。立ち上がり、一度伸びをした後にこちらを向いた。
「そうだ。まだ名前聞いてなかったね」
正直教えるのは気が進まなかったが、相手が先に名乗ったことと、多分この目の前にいるへらへらとした男が一番状況を知っていそうだったので私は答えた。
「…アサ」
但し名前だけ。向こうも名字だけなのだから文句はないだろう。
「なるほど。それで質問はあるかな?」
私はため息を一つついて言った。
「取りあえず。今の状況を説明してください」
船酔いでも車酔いでもない、新たな乗り物酔いを経験していることも、頭が痛みでぼやけていてよくわからない。ひどく緩慢とした速度で目を開いてみるも、視界がぼやけていて、わかることはやけに明るい部屋にいるということだけだ。
体の感覚が戻ってきた。ベッドの上に寝かされているのか、それにしても妙にふかふかとしている。カッ、カッ、カッ…。何かが近づいてくる音がする。
「・・連れて・・・・かい。じゃあ・・・・」
微かに声が聞こえる。体を何とか起こすと、自分がソファに寝かされていることがわかった。
白い部屋だった。目の前には大きなテーブルがあり、それを中心に小さな机が群れのように集まっている。その上にはごちゃごちゃと書類が積み重なっている。
そこに埋もれているパソコンも壁にかかっている時計も、およそ部屋にあるもの全てが白で統一されていた。まるで統一することでその中に何かを隠そうとしているかのようだ。
乱雑で、混沌としているのに、そこには確かに調和があった。
カチャ。音がしてようやくそこにドアがあるということに気がついた。
ドアノブまで真っ白なドアは、壁に切れ込みを入れたように開いた。
そこから白衣を着た男が現れた。髪は黒い。その後ろからちらちらと赤紫が見える。
「いやぁ災難だったねぇ。色々と」
久々にお客が来たと、かなり不穏な一言を残しながら、そいつは私の側にあった椅子に腰かけた。
「コーヒーと紅茶はどちらが好みかい?それともジュースのほうがいいのかな?」
くすくすと笑いながら、自分のコーヒーマグを揺らす。中の黒い液体が異様な存在感を放つ。
光を吸い込んでしまう黒。それは何かを思い出させるようで…。
「それにしても、あんな時間にうろついているなんて珍しい人だねぇ。何か面白いことでもあったの?」
くるくると椅子を回すことを止めたそいつはこちらを見てきた。目が合う。何も言わないでいると、
「ああ!君、怪しんでいるね?無理もないけどさぁ。僕は左藤っていうんだ。人偏のない左藤。ここでロボットについて研究している。一人でね」
「あの…。」
「ん?あぁ、やっぱりコーヒーがいいかな?」
マゼンタ頼むよ。と、後ろに控えていたおかっぱに言った。どうやら赤紫の名前は“マゼンタ”というらしい。そのまんまだな。
「…だからぁ。主人じゃなくて博士って呼んでほしいって言ってるでしょ」
「名称変更を行いますか?パスワードを入力…」
「キャンセル。いいからコーヒー淹れてきなさい」
了解。と言ってマゼンタはドアへ向かった。
「あの…」
「あ、やっぱ紅茶がよかった?」
「それはいいんですけど。何やってたんですか」
「何って。呼び方変えてもらおうとしただけじゃないか」
「…法律で個人の呼称・命令遂行範囲の設定などはパスをつけて管理することになっています。パスなしにそれらを変えることなんてできませんよ」
「知ってるけど?」
「…それならなんであんな無駄なことを…」
ふうんと言って左藤は足を組みなおした。ゆっくりと一口コーヒーを飲む。
「君はロボットの学習能力って信じてる?」
前屈みになり、下から見上げてくる目線は好奇心でキラキラしている。けれども私はその目を見て、何故かロボット達のガラスの目を思い出した。
「僕はね、信じているんだ。実験の一つだよ。」
マゼンタが戻ってきた。目の前に出されたコーヒーを私は受取ったまま持て余す。
「プログラムは感情を生み出すのかってことさ」
そういってマグをマゼンタの持つ盆に置いた。立ち上がり、一度伸びをした後にこちらを向いた。
「そうだ。まだ名前聞いてなかったね」
正直教えるのは気が進まなかったが、相手が先に名乗ったことと、多分この目の前にいるへらへらとした男が一番状況を知っていそうだったので私は答えた。
「…アサ」
但し名前だけ。向こうも名字だけなのだから文句はないだろう。
「なるほど。それで質問はあるかな?」
私はため息を一つついて言った。
「取りあえず。今の状況を説明してください」
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