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じゃあ部屋を移ろうか。そう言って左藤は歩き出した。
さっき開いたドアから出るのかと思いきや、それとは別に私たちの真横に位置するドアへと向かう。
これまた真っ白なドアで、そこを示されるまで私は気付かなかった。
もっとも、ドアの半分くらいは書類やらコードやらで埋もれていたが。
ドアの先も明るく白い部屋が広がっていた。
ただ、正面にはあの夜、いきなり現れたロボットが眠っていた。
斜めになった充電器に立ったまま横たわっている。
「紹介するよ。こいつは」
「シアン」
思いついた名を言うと、左藤は目を丸くしている。やっぱりそのまんまだった。
「まぁいいや、マゼンタ。経過を教えてくれ」
「充電開始時刻は5時間23分43秒前、午前4時12分頃です。完了時刻は2時間24分前です」
「んー、じゃあやっぱり寝坊だな。起こしてやってくれ」
「了解。強制起動させます」
マゼンタが手元のコンソールを操作すると、文字通り電気が走ったようにシアンの体が震えた。
それはひどく不機嫌な顔だった。眉間に皺がより、頭をポリポリと掻いている。
目には苛立ちが溢れていて、とてもじゃないが夜に倒れていたロボットとは別人のようだった。
「おいマゼンタ。勝手に起こすなっての。」
大きさこそ小さかったが、良く通る声に怒気が混ざっていることは間違いなく、ぎろりと睨む視線を一切無視してマゼンタはコンソールから離れた。
「ありえない…」
私は呟いていた。部屋にある全ての視線が集まる。
「ロボットが寝坊して、起こされて機嫌が悪いだなんてありえない!」
いつのまにか呟きは小さな叫びに変わっていた。無意識に首に手をやり、髪をいじる。焦ったり、頭の中の整理がつかない時によくやる癖だ。
「あのさぁ、さっきから思っていたんだけど、君ってx大の学生だよねぇ?」
話の腰を折ったことに対してなのか、大変すまなそうに左藤は切りだした。
私はその言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「え…。なんでそのことがわかったんですか?」
なんとかそれだけ言葉を放ったが、目は見開いたままだ。それを左藤は面白そうに眺めている。
そしてくすり、と笑った。
「単純なことだよ。『人間に類似する機械及び一部生体機械に関する法律』通称、ロボット法なんてマイナーな法律知っているのなんて、それを研究している奴らじゃなきゃまずわからない。それにシアンの不機嫌な顔をありえないなんて言ったしね。そんな君なら知っているだろうけど、最近の表情再現技術はものすごい発達を遂げているんだよ」
そのことは知っていた。現在芸能界などで働くロボットなども増えてきていてそのために、いらつきや怒りの表情を表せるロボットも出てきていた。
「それでもありえないって断言できるほどロボットの意義を把握している君くらいの年代の子っていうのは、ほぼ間違いなくロボット工学系の学生だ。そしてその専門学科が設置されていて、ここらから通える大学っていうのはx大しかないと思うんだけど、どうかな?」
「…あってます」
「よかったぁ。僕、推測を話すのって少し嫌いでね…」
「わざわざ起こしておいて用事はないんですか?」
放っておいたシアンがそれはもう物凄い形相で私達を睨んでいた。
「あはは。相変わらず短気だなぁ。マゼンタは良い子にしてまっているってのにさぁ。」
「あいつと一緒にしないで下さい…」
「じゃあここで自己紹介ターイム。こっちの子がアサ君。以上!」
話を全く聞いていない左藤の受け答えに内心ひやひやしたが、取りあえず会釈する。
「そしてアサ君に質問!なんでシアンは不機嫌な顔をすることができるのでしょうか?」
「え…。えっと。まずロボットは人に対して有益なものでなくてはならないことが前提にあって…なので殺人なども違法ではあるけど使用者にとっては有益で…でも不機嫌とか怒りといった負の感情は一部の例外を除いてどちらかというと不利益で…えっと…」
教科書の中身を全て思い出すかのような作業をしても答えはまとまらない。
「ふふふふ。悩んでいるねぇ。答えは僕にもわからない、でした~!」
「は?」
この人は私の顔をぽかんとしたまま固定させたいのだろうか。
さっき開いたドアから出るのかと思いきや、それとは別に私たちの真横に位置するドアへと向かう。
これまた真っ白なドアで、そこを示されるまで私は気付かなかった。
もっとも、ドアの半分くらいは書類やらコードやらで埋もれていたが。
ドアの先も明るく白い部屋が広がっていた。
ただ、正面にはあの夜、いきなり現れたロボットが眠っていた。
斜めになった充電器に立ったまま横たわっている。
「紹介するよ。こいつは」
「シアン」
思いついた名を言うと、左藤は目を丸くしている。やっぱりそのまんまだった。
「まぁいいや、マゼンタ。経過を教えてくれ」
「充電開始時刻は5時間23分43秒前、午前4時12分頃です。完了時刻は2時間24分前です」
「んー、じゃあやっぱり寝坊だな。起こしてやってくれ」
「了解。強制起動させます」
マゼンタが手元のコンソールを操作すると、文字通り電気が走ったようにシアンの体が震えた。
それはひどく不機嫌な顔だった。眉間に皺がより、頭をポリポリと掻いている。
目には苛立ちが溢れていて、とてもじゃないが夜に倒れていたロボットとは別人のようだった。
「おいマゼンタ。勝手に起こすなっての。」
大きさこそ小さかったが、良く通る声に怒気が混ざっていることは間違いなく、ぎろりと睨む視線を一切無視してマゼンタはコンソールから離れた。
「ありえない…」
私は呟いていた。部屋にある全ての視線が集まる。
「ロボットが寝坊して、起こされて機嫌が悪いだなんてありえない!」
いつのまにか呟きは小さな叫びに変わっていた。無意識に首に手をやり、髪をいじる。焦ったり、頭の中の整理がつかない時によくやる癖だ。
「あのさぁ、さっきから思っていたんだけど、君ってx大の学生だよねぇ?」
話の腰を折ったことに対してなのか、大変すまなそうに左藤は切りだした。
私はその言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「え…。なんでそのことがわかったんですか?」
なんとかそれだけ言葉を放ったが、目は見開いたままだ。それを左藤は面白そうに眺めている。
そしてくすり、と笑った。
「単純なことだよ。『人間に類似する機械及び一部生体機械に関する法律』通称、ロボット法なんてマイナーな法律知っているのなんて、それを研究している奴らじゃなきゃまずわからない。それにシアンの不機嫌な顔をありえないなんて言ったしね。そんな君なら知っているだろうけど、最近の表情再現技術はものすごい発達を遂げているんだよ」
そのことは知っていた。現在芸能界などで働くロボットなども増えてきていてそのために、いらつきや怒りの表情を表せるロボットも出てきていた。
「それでもありえないって断言できるほどロボットの意義を把握している君くらいの年代の子っていうのは、ほぼ間違いなくロボット工学系の学生だ。そしてその専門学科が設置されていて、ここらから通える大学っていうのはx大しかないと思うんだけど、どうかな?」
「…あってます」
「よかったぁ。僕、推測を話すのって少し嫌いでね…」
「わざわざ起こしておいて用事はないんですか?」
放っておいたシアンがそれはもう物凄い形相で私達を睨んでいた。
「あはは。相変わらず短気だなぁ。マゼンタは良い子にしてまっているってのにさぁ。」
「あいつと一緒にしないで下さい…」
「じゃあここで自己紹介ターイム。こっちの子がアサ君。以上!」
話を全く聞いていない左藤の受け答えに内心ひやひやしたが、取りあえず会釈する。
「そしてアサ君に質問!なんでシアンは不機嫌な顔をすることができるのでしょうか?」
「え…。えっと。まずロボットは人に対して有益なものでなくてはならないことが前提にあって…なので殺人なども違法ではあるけど使用者にとっては有益で…でも不機嫌とか怒りといった負の感情は一部の例外を除いてどちらかというと不利益で…えっと…」
教科書の中身を全て思い出すかのような作業をしても答えはまとまらない。
「ふふふふ。悩んでいるねぇ。答えは僕にもわからない、でした~!」
「は?」
この人は私の顔をぽかんとしたまま固定させたいのだろうか。
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