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――あの時は雨が降っていた。確か、寒かった気がする。
寒くて、寒くて、なのに体の感覚は無くて、どこに行けばいいかもわからなかった。
寒気が止まった。ゴミ捨て場に自分はいた。そう、感じることができた。
体の感覚が戻ってきたみたいだ。だが、おかしなことに体を動かそうにも指一つ、瞼すら動かない。
というか目は開かれたままだった。
人が立ち止まった。どうやらこちらを見ているようだが、首が上がらないので足元を見つめるしかない。靴や足の長さから男だろう。そんなことを思っていたら、そいつはしゃがみ込んで、顔を覗き込んできた。
「何でこんなとこに捨てられてるんだろう?」
男は目線を逸らさなかった。じっと目だけを見つめている。自分は声を出そうとした。しかし動く訳がなかった。嫌だと思った。こんなところに打ち捨てられたままなのは、嫌だ。助けてほしい。助けてくれ。
声はでない。
――タスケテ…――
いくら力を振り絞っても雨粒一つ動かすことはかなわなかった。が、
「ふむ。よし、マゼンタ。この子研究所まで連れてって」
「了解しました。輸送方法として担いで行く場合と、エネルギーを分けてこのロボットに歩いてもらう場合がありますが、いかがなさいますか」
「んーどっちの方が燃料消費しないの?」
「歩いてもらった方がエネルギー消費を抑えられますが、ゴミ捨て場にあるという点を考慮すると、エネルギーを分けても動かない場合があります」
「それって無駄になるってこと?」
「そう解釈することも可能です」
「じゃ、君が運んでってよ。我が家の家計は火の車だからねぇ」
「近年の家計の収支はいたって平年並みですが?」
「あはは!そりゃいい言い方だなぁ。事実は万年赤字なのに、『近年の我が家の家計の収支は平年並みです』だってさ!何かしっかりしてる感じになってる。日本語って面白いもんだ。…と、無駄話はこの辺にしてさっさと帰ろうか。ここは寒いし、何よりこの子の機嫌が段々と悪くなっているからね」
「了解。Ⅹ‐5428613+654789632の輸送を開始します」
「…何その数字」
「このロボットの型番ですが?比較的最近製造された型のようです」
「んーなんか呼びづらい名前だなあ。よし、決めた!」
君の名前はシアンだ。
それが、一番最初の記憶――。
「メモリーがないのにこんなに言語機能が発達している訳ないじゃないですか!そもそも会話をするにもメモリーに基本的な単語が記憶されているから出来るのであって…ってちょっとシアンは聞いてるんですか?」
「ん?ああ…ぼうっとしていた」
はぁーと私はため息をついた。一体このロボットはどれだけ私の常識を崩せば気が済むというのだろうか。
「ははっ。ほんと君たちってどっちがロボットなのかわからないよねぇ~」
「どうしてそうなるんですか!どうみたって私は人間でしょう!」
「いやだって今時そんな色に髪染める人いないでしょう?」
嫌なとこに気付かれた。そう思った。私の髪は一昔流行ったような金髪や茶髪ではなく真っ黄色に染め上げている。一般にロボットが広まり、ビビットカラーの髪はロボットの代名詞と取って代わられ、今はもっぱら黒やグレーなどのモノトーンが流行なのだ。
大抵、私が初対面で挨拶を交わした後に言われる一言が、「人間、ですよね?」である。そして何故そんな色に染めているのかと聞くのだ。
なんて面倒なんだ。そんなことは話したくないというのに。またこのにやにや笑う男もそう聞いてくるに違いない。そう構えていると、
「いやー僕も思い切って染めようかな~。あ、でも何色にしよう。シアンにマゼンタにイエローか。ってことは僕の選択肢は黒しかないじゃないか!ずるいぞ皆先に好きな色を取っていってさ!」
…いや、意味がわからない。何はともあれ深く追求してこないようだ。
アサが安心してひと息ついているところを見ながら、左藤は言った。
「さてさて、君たち。大事なことを一つ忘れてはいないかな?」
ギク。私はもう一度身構えた。
「腹が減った。昼食の時間だ!」
寒くて、寒くて、なのに体の感覚は無くて、どこに行けばいいかもわからなかった。
寒気が止まった。ゴミ捨て場に自分はいた。そう、感じることができた。
体の感覚が戻ってきたみたいだ。だが、おかしなことに体を動かそうにも指一つ、瞼すら動かない。
というか目は開かれたままだった。
人が立ち止まった。どうやらこちらを見ているようだが、首が上がらないので足元を見つめるしかない。靴や足の長さから男だろう。そんなことを思っていたら、そいつはしゃがみ込んで、顔を覗き込んできた。
「何でこんなとこに捨てられてるんだろう?」
男は目線を逸らさなかった。じっと目だけを見つめている。自分は声を出そうとした。しかし動く訳がなかった。嫌だと思った。こんなところに打ち捨てられたままなのは、嫌だ。助けてほしい。助けてくれ。
声はでない。
――タスケテ…――
いくら力を振り絞っても雨粒一つ動かすことはかなわなかった。が、
「ふむ。よし、マゼンタ。この子研究所まで連れてって」
「了解しました。輸送方法として担いで行く場合と、エネルギーを分けてこのロボットに歩いてもらう場合がありますが、いかがなさいますか」
「んーどっちの方が燃料消費しないの?」
「歩いてもらった方がエネルギー消費を抑えられますが、ゴミ捨て場にあるという点を考慮すると、エネルギーを分けても動かない場合があります」
「それって無駄になるってこと?」
「そう解釈することも可能です」
「じゃ、君が運んでってよ。我が家の家計は火の車だからねぇ」
「近年の家計の収支はいたって平年並みですが?」
「あはは!そりゃいい言い方だなぁ。事実は万年赤字なのに、『近年の我が家の家計の収支は平年並みです』だってさ!何かしっかりしてる感じになってる。日本語って面白いもんだ。…と、無駄話はこの辺にしてさっさと帰ろうか。ここは寒いし、何よりこの子の機嫌が段々と悪くなっているからね」
「了解。Ⅹ‐5428613+654789632の輸送を開始します」
「…何その数字」
「このロボットの型番ですが?比較的最近製造された型のようです」
「んーなんか呼びづらい名前だなあ。よし、決めた!」
君の名前はシアンだ。
それが、一番最初の記憶――。
「メモリーがないのにこんなに言語機能が発達している訳ないじゃないですか!そもそも会話をするにもメモリーに基本的な単語が記憶されているから出来るのであって…ってちょっとシアンは聞いてるんですか?」
「ん?ああ…ぼうっとしていた」
はぁーと私はため息をついた。一体このロボットはどれだけ私の常識を崩せば気が済むというのだろうか。
「ははっ。ほんと君たちってどっちがロボットなのかわからないよねぇ~」
「どうしてそうなるんですか!どうみたって私は人間でしょう!」
「いやだって今時そんな色に髪染める人いないでしょう?」
嫌なとこに気付かれた。そう思った。私の髪は一昔流行ったような金髪や茶髪ではなく真っ黄色に染め上げている。一般にロボットが広まり、ビビットカラーの髪はロボットの代名詞と取って代わられ、今はもっぱら黒やグレーなどのモノトーンが流行なのだ。
大抵、私が初対面で挨拶を交わした後に言われる一言が、「人間、ですよね?」である。そして何故そんな色に染めているのかと聞くのだ。
なんて面倒なんだ。そんなことは話したくないというのに。またこのにやにや笑う男もそう聞いてくるに違いない。そう構えていると、
「いやー僕も思い切って染めようかな~。あ、でも何色にしよう。シアンにマゼンタにイエローか。ってことは僕の選択肢は黒しかないじゃないか!ずるいぞ皆先に好きな色を取っていってさ!」
…いや、意味がわからない。何はともあれ深く追求してこないようだ。
アサが安心してひと息ついているところを見ながら、左藤は言った。
「さてさて、君たち。大事なことを一つ忘れてはいないかな?」
ギク。私はもう一度身構えた。
「腹が減った。昼食の時間だ!」
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