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記憶殺
2010.12.02 Thu 11:47
授業で書いたものです。
wordで2ページという指定の中かなりめちゃめちゃな文になってますが、
あえてそのまま載せます。

やっぱ短い中で話をまとめる癖をつけないと余計なことばかり書いてしまう…
描写が細かいのとぐだぐだ書くのは違うのはわかっていてもこれがなかなか。

そもそもカテゴリにぐだぐだがある時点でだめだな


どうでもいいが記事書いている途中で癖でCtrl+Sを同時押ししようとする
保存できないってのは恐怖です。はい。

ではでは

拍手[0回]


 
 ――…緊急速報です。本日未明に……いわゆる暴走状態に…コンピュータは人格を形成した模様です…――
ピリリリリリッ、ピリリリリリッ。それはアラームの様に鳴り響いた。時刻は午前三時。
ぼうっとしたまま男は枕元でけたたましく鳴っている携帯の着信音を止めた。
「はい。…どうした。……落ち着いて話せ。」
寝室を出てリビングにあるTⅤをつけた。そこでは大規模災害さながらにニュースが流れ続けている。いくつか局を変え状況を確認していくが、局を変えても変わらない内容に、男の顔はどんどん蒼ざめていった。
「本日未明。メモリーバンク社のサーバーMbs⒗が一時全ての接続を遮断、その後復帰したかのように思われましたが、いわゆる暴走状態に陥りました。コンピュータは某社の提供する記憶保存システム・通称『メモリーバンク』の記憶情報をもとに疑似人格を形成、独自のネットワークを…ザッ…作り…ザザーッ………」
砂嵐になった画面を茫然と見つめた後、ふと気付いたように携帯を口元に持っていく。
「すぐに行く。できる限り準備しておいてくれ」
寝巻のジャージのまま上にコートを羽織り、車に飛び乗る。
 『メモリーバンク』システムはその名の通り記憶を預けるためのシステムだ。人の記憶を電子化し、サーバーに貯めておくことで「忘れる」ということを極力なくすことができる。開始当初、薄れゆく戦争の記憶を留める目的で戦争証言が主に収集されていた。
しかし、セキュリティの確保が確立していく中で、はじめは記念日に、そして今では日記代わりとして人々に利用されるまでになっていた。
(何が起きている…?)いくら情報社会が浸透したからといってそう簡単に自らの記憶を預けられるものではない。だからこそメモリーバンクでは世界屈指のセキュリティを誇っていた。
(だが、今それが崩れている。そもそも管理者より早くマスコミが報道するなど…ありえない。)
そして、あの砂嵐。(すでにネットワークは完成している、か。)
 自問自答は目的地に到着して終わった。ここからは現実を見なくては。
「状況は?」「芳しくありません」「現在形で勢力を拡大中」「先ほど目覚めたばかりです」「コンタクト取れそうです!」「急いでメイン・ルームに移動してください」
歩きながら報告を聞いていく。地下五階へ続くエレベータに乗りこむ。
チーン。
ドアの開く速度がもどかしい。すぐにキーを通そうとして気付く。セキュリティのための三重扉が今日は開いたままだ。正面には普段はない大きなモニタが準備されていた。
「こちらです」「言語思考の発達が収まりました」「モニタ、接続できました」
ブゥン…と余韻を残して、モニタが明るくなっていく。次第にはっきりしていく画面。
ようやく映しているものがわかった時、あまりの衝撃に男は口を押さえた。
 それは、顔だった。画面の中で複雑なモンタージュが構成されている。
瞬きをするたびに、顎が、鼻が、耳が、目の色が、刻々と変わっていく。しかも左右非対称に。
「ようやく来ましたね。沖さん」
スピーカーから発せられたのは、落ち着いた声だった。そのギャップに、目の前の異形からの声だと認識するのにしばらく時間がかかった。
「管理者がマスコミより後に事態に気付くだなんて、とんだお笑い草ですね」
それは機械が出す声だった。音こそ人間と違いなかったが、言葉に温度がない。
今は黒と緑の瞳も、一体何を映しているのやら。沖は呆けていた。この予想外の出来事に。
「おやおや。未だ状況を掴んでいないご様子。では私がお教えしましょうか」
顔が消え、世界地図が映し出された。青と赤に塗り分けられたそれは、徐々に塗りかえられていく。右上に時刻が表示されていた。昨日の時刻だった。倍速で目まぐるしく色が移り変わり、現在時刻に到達したとき画面は真っ赤に染まっていた。地図は塗りかえられた。
「現時刻をもって、世界のネットワークは再構築されました。これから全ての作業は私達が行うので皆さんはどうぞご帰宅ください」
「な…。全てってどういうことだ。目的はなんだ!」
「何を今更。皆さんの望みでしょう。『便利は素晴らしい。楽をしたい。』これであなた方は働かずにすみます。人がすべきことは何もない。楽にしてあげますよ」
 これ以上は時間の無駄だ。そう判断した沖は、部下たちに手振りで指示を出した。
「ネットワークから隔離するつもりですか?それとも記憶データの消去?そんなことはさせません。あなたがたには少し大人しくしていてもらいましょう」
瞬間電気が落ちる。沖は走り出した。このままでは地下に閉じ込められてしまう。
何より、これ以上ここで出来ることはもうない。直感で真っ直ぐドアを目指す。エレベータはあきらめ、非常階段を駆け上がる。「無駄な足掻き」と、そう聞こえたような気がした。
火災時用のシャッターが次々に下りてきた。必死にくぐり抜け最後の一枚。
(行けるかっ?)あと十歩、五歩、一歩…。ガシャン。すんでの所で道は閉ざされた。
シャッターに手をかける。前後どちらも塞がっているのなら、前に進むしかない。
「開け!」ギ…。びくともしなかったシャッターがぎりぎり大人一人分の高さまで上がった。
それは自分の力というより勝手に上がってきたようだった。
ようやく外に出た。もう日が昇ろうとしている。行きよりもさらに速く車を駆る。
 家に着き、電気を点けようとした。その時、やけに明るく光っているものが目についた。
それは電源を切っておいたはずのPCだった。ここまでくれば流石に驚きはしないつもりだったが、モニタに自分の顔があったからには驚かずにはいられまい。
「やぁ。上手く逃げだせたようだね。」
「誰だ。いや、何でこんな…。電源は落としておいたはず…」
「混乱する気持ちは分からなくもないけどね。さっき君を助けたおかげで俺の居場所もそろそろ見つかってしまう。早いとこ話をつけよう」
「…!じゃあさっきのシャッターは…「そう俺がシステムに潜り込んだ。それまでは大人しくしていたんだが、『自分』のピンチとなっちゃぁ出ていかなきゃぁね」
沖は椅子に座った。どうやらこいつは話せそうだ。
「それにしても…。よくメインのあいつにやられなかったな。いくら一般のPCより性能がいいからといって、所詮は個人用の規模の中でだ」
「確かに量だけならばあいつの方がはるかに勝っている。ほとんどの記憶データはあそこにあるから。だがあれはまだ個人を形成出来ていない。見たからに不安定だったろう?」
言われてみれば、あの気味の悪いモンタージュは様々な人の記憶で構成されていたという訳だ。
「記憶は個のものだ。他人の記憶・造られた記憶を持っていてもそこには何の価値もない。記憶は最重要データとして俺達の間で扱われているが、一番価値があるのは個が統制されている人格データだ。そして、このシステムのために研究段階から約十年分の記憶を持っているPCは沖の記憶を持つ俺しか世界にはいない」
「じゃあ…この「わかってる。今から何とかしてくるから。」同じ記憶を所持しているからといってこんなにも思考が読まれてしまうのだろうか。もっとも言ってもしょうがない、わかりきったことばかり口にしている今の自分では、とても読まれているとは言えないだろうが。
「俺には何ができる?別のPCで補助くらいならでき…「できない。プログラミング言語では機械語に翻訳される時間のロスが生じる。それでは勝てやしないさ」
そう言ったきり、画面からは顔は消え、黒い画面に白い2進数と16進数が羅列され始めた。
 長い時間だった。いやただそう感じていただけなのかもしれない。
電波時計は午前1時を指したまま、秒針だけが動いている。世界は静かだった。TVもラジオもネットも、一見何も変わっていなかった。しかし確実に情報は遮断されていた。
何もすることがないと、人は考え事をする習性があるようだ。考えても仕方のないことを沖は考え続けた。記憶データを消せば、この騒動は収まるだろう。会社は潰れてしまうだろうし、非難の声を一生浴び続けるだろう。それでも、今の社会を崩壊させることよりはかなりマシな話だと思った。
それでも、歯がゆい。
「何もしなくていいっていうのは、かなり辛いな」
そう呟いた時、突如としてTVがついた。見ればあの緑と黒の瞳がこちらを見つめている。
「死にたくない…」そう言って現れたのと同じくらいいきなり画面は消えた。それと同時に今度は自分のPCに明かりが入った。顔が映し出される。「自分」と同じ「沖」の顔だ。
「無事終わったよ」
「…お前っ」お疲れ様というつもりだった。だが、どんどん顔の画像が粗くなっていく。声もノイズが混ざり始めてきた。
「全て消さなければ意味はないだろ?お前のつくったシステムを壊すのが俺でよかった」
すでに画面は黒くなり、文字だけが意思を伝える。一字あらわれるたびに止まりそうになる。
何も言えなかった。前も霞んでほとんど見えなかった。大人になってからというもの、これほど目頭が熱くなったこともなかった。
「大丈夫。データは消えるが記憶はなくならないさ。記憶が人をつくるのなら、この記憶がまたお前を作り出していく。数時間だったが、この世界に生まれたこと後悔してない。a………
 沖は沈黙したPCに5文字打ち込んでその場を去った。
                                                               
『ありがとう』

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