×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ぐらぐら揺れていた視界も、ようやく落ち着いたようだ。
のろのろと、前かがみでそれに近づいていく。
辺りは静かなままだったが、先ほどまでの異様な空気は既になく、穏やかな眠りへと戻っていた。
倒れていたのは人のようだ。うつ伏せになったまま微塵も動かない。
暗くていまいち状況が掴みにくいが、ともかく眠っているわけではなさそうだ。
そもそも、この人はどうやってここに現れたのだろうか。そんな疑問を抱えながら、ひとまず顔を覗いてみる。
水色がかった緑―ラムネ色―の髪は毛先がはね放題。髪を少し掻きあげて真っ先に見えたのは、涙の跡のような線。そしてその線が意味することは、
「ライン?!ってことは君、ロボット…!?」
下目蓋から口唇の両端へと流れる涙のライン。そして、長めの髪で隠れていた耳は、人のものではなくヘッドホンのような物が取り付けられている。
人間の外見に限りなく近づいたロボットを生産出来るようになった現在。
人とロボットの区別をつけることが義務づけられることになったのが10年前。
倫理的問題も相当分含んでいるが、法律制定の最大の理由としては犯罪目的の利用が後を絶たないことがあった。人に偽装したロボットを禁止するために、現在生産されているもの全てに明らかに人とは違う外見を作る必要が生じた。
それを総称して【コード】と呼んでいるが、今一番取り入れられているコードが「涙の線(ライン)」だ。その他には髪・目・肌などの色を変えたり、腕や足などにはパーツごとにナンバーが入れられていたりと、とにかく一見して見分けがつくようにされている。
ロボットの生産技術は大規模かつ高度なため、非合法で造ることは難しく、当初の目的はほぼ達成されたと言える。
そんな授業での知識を思いだしながら、涙の線の元、透き通った、しかし生気のない蒼いガラス玉を覗きこむ。
「でも、なんでこんな所に…」
開いたままの目がいささか不気味で、少し距離を置いて観察する。
「エネルギーは切れているみたいだし」
どうにも状況は変わらず、かといってこれを放っていくのも助けられた身分としては(そもそもそのこと自体が謎なのだが)、何か咎められた気分になるのでそれもできず、私はあたりをぐるぐるとまわっていた。すると、
「ああ。こんなところに いた」
性別のわからない合成音声。少しばかりたどたどしい日本語。振り返ると、赤紫色のおかっぱのロボットが立っていた。ぼうっとそれを眺めているとおかっぱは気にも留めず、素早く倒れているロボットを担ぎあげた。
「怪我などは ございま せんか」
「へっ。あぁ、大丈夫です。むしろ助けられたっていうか…えっと」
ガガガッ。ぐだぐだと謝辞を述べようとしていた私の言葉を遮った音は、おかっぱの耳元から発せられていた。よく見るとおかっぱの耳はインカムになっているようだった。
「了解。」
誰かと通信が終わったようだ。
「主人が詳しく 話を聞きたい そうです。お連れして よろしいですね?」
そう言っている間にも距離を詰めてくる。
「それって、疑問じゃなくて強制だよねっ…っ‼」
もう一体のロボットと同じ様に担ぎあげられ、いきなり走り始めた。
私はあまりの速さに、酔った。
のろのろと、前かがみでそれに近づいていく。
辺りは静かなままだったが、先ほどまでの異様な空気は既になく、穏やかな眠りへと戻っていた。
倒れていたのは人のようだ。うつ伏せになったまま微塵も動かない。
暗くていまいち状況が掴みにくいが、ともかく眠っているわけではなさそうだ。
そもそも、この人はどうやってここに現れたのだろうか。そんな疑問を抱えながら、ひとまず顔を覗いてみる。
水色がかった緑―ラムネ色―の髪は毛先がはね放題。髪を少し掻きあげて真っ先に見えたのは、涙の跡のような線。そしてその線が意味することは、
「ライン?!ってことは君、ロボット…!?」
下目蓋から口唇の両端へと流れる涙のライン。そして、長めの髪で隠れていた耳は、人のものではなくヘッドホンのような物が取り付けられている。
人間の外見に限りなく近づいたロボットを生産出来るようになった現在。
人とロボットの区別をつけることが義務づけられることになったのが10年前。
倫理的問題も相当分含んでいるが、法律制定の最大の理由としては犯罪目的の利用が後を絶たないことがあった。人に偽装したロボットを禁止するために、現在生産されているもの全てに明らかに人とは違う外見を作る必要が生じた。
それを総称して【コード】と呼んでいるが、今一番取り入れられているコードが「涙の線(ライン)」だ。その他には髪・目・肌などの色を変えたり、腕や足などにはパーツごとにナンバーが入れられていたりと、とにかく一見して見分けがつくようにされている。
ロボットの生産技術は大規模かつ高度なため、非合法で造ることは難しく、当初の目的はほぼ達成されたと言える。
そんな授業での知識を思いだしながら、涙の線の元、透き通った、しかし生気のない蒼いガラス玉を覗きこむ。
「でも、なんでこんな所に…」
開いたままの目がいささか不気味で、少し距離を置いて観察する。
「エネルギーは切れているみたいだし」
どうにも状況は変わらず、かといってこれを放っていくのも助けられた身分としては(そもそもそのこと自体が謎なのだが)、何か咎められた気分になるのでそれもできず、私はあたりをぐるぐるとまわっていた。すると、
「ああ。こんなところに いた」
性別のわからない合成音声。少しばかりたどたどしい日本語。振り返ると、赤紫色のおかっぱのロボットが立っていた。ぼうっとそれを眺めているとおかっぱは気にも留めず、素早く倒れているロボットを担ぎあげた。
「怪我などは ございま せんか」
「へっ。あぁ、大丈夫です。むしろ助けられたっていうか…えっと」
ガガガッ。ぐだぐだと謝辞を述べようとしていた私の言葉を遮った音は、おかっぱの耳元から発せられていた。よく見るとおかっぱの耳はインカムになっているようだった。
「了解。」
誰かと通信が終わったようだ。
「主人が詳しく 話を聞きたい そうです。お連れして よろしいですね?」
そう言っている間にも距離を詰めてくる。
「それって、疑問じゃなくて強制だよねっ…っ‼」
もう一体のロボットと同じ様に担ぎあげられ、いきなり走り始めた。
私はあまりの速さに、酔った。
PR
comment
admin/write
カウンター
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
おきにいり
ブログ内検索
ピクシブランキング
ここに載るのが目標。