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「私は充電に戻るとします」
そう言って去ったのはシアンだった。
「あれ、口調変わってませんか?」
シアンがドアを出てすぐ、私は左藤に尋ねた。
「まぁそれは食べながらにしよう」
部屋を出て、また移動する。
例のごとく白い部屋へ着いた。
これまた別の部屋で、大きめのテーブルと椅子が六脚置いてあるだけだった。
見上げるとドアとは正反対の壁に横に細長い絵がかかっている。
と、おもいきや近くに寄ってみるとそれが窓だということに気づく。
あまりにも周りが白すぎるために、またその位置が高すぎるために、
空しか見えない窓は精巧な絵画のようだった。
「まぁ座ってよ。しばらくしたらマゼンタが食事を運んできてくれる」
座りながら、ふと今は何時なのだろうと思い上着のポケットから携帯を取り出し確認する。
左藤が腹が減ったと喚いただけあって、予想した通り時刻は十二時を少し過ぎたところだ。
全くなんて腹時計だ。
「ふむ。人が目の前で話をしようとしているのに携帯を出すとは流石現代っ子だね。
授業の代返でも頼んだのかい?」
「今時、点呼なんて取りませんよ。教室に入る時にカードキーをかざさないと本人がいても出席扱いにはなりませんから」
「ああじゃあそのカードキーを友人にすでに渡しておいて出席扱いにしてもらうためにメールをしたということだね?ああ、そんなことをしなくても今時の学生ならカード偽造くらいお手の物なんだろう」
「いや、だからそんなことはしないです。というかできませんって。普通に欠席になるだけですよ」
「何、君友達いないの?」
「・・・」
いったいどこからそんな考えに飛ぶのか理解できない。
否定の言葉を出そうとするも、一旦沈黙してしまったことで何も言いだせなくなってしまった。
簡単に言えば図星だった。いないというよりは作る意味がない。
どうせあの日から…。
「じゃあしょうがないから僕が出席扱いにしといてあげるよ」
「・・はい?」
「友達のいない可哀相なアサ君のために僕がハッキングしてあげまーす」
いきなりノートパソコンを取り出し、ものすごい速さでキーボードを叩き始める。
というかそのノートパソコンはどこから取り出したのかと突っ込みを入れたい所だったが、真っ白なボディだったのでどうせそこらへんに転がっていたのだろうということに気付いた。
何もないように見えたこの部屋にも実は色々と物が転がっていたようだ。
「いや、そんなことしなくていいですから!失敗したらどうするんですか!」
「えーもうおわっちゃったよ?」
「は?」
ガチャリ。
タイミングを見計らったかのようにマゼンタが部屋に入ってきた。
パスタを私達の前に並べ終わると、レストランの給仕のように後ろの方へ移動し立ち尽くす。
「お、今日はゴルゴンゾーラか」
左藤は湯気の上がるパスタをすすり始める。私も仕方なく食べ始めることにした。
「シアンはね。捨てられていたんだ」
おもむろに左藤は話を始めた。
「半年前の雨の日に。ゴミ捨て場に捨てられていたのを僕が拾ったんだ」
「・・それはシアンが変わっていることと何か関係があるんですか」
「君はせっかちだね。話はまだ始まったばかりじゃないか。とにかく、ここに連れてきて検査した。
それこそ頭のてっぺんから足のつま先まで。見てすぐにわかったことは、型はマゼンタより一つ前の世代で、AIとしてはマゼンタより少し劣るくらいだ。それなのに何故、あれだけの会話ができるのか。すぐに疑問に思ったさ。結果、世間一般的に売られているロボットと何も変わりがないということがわかった。いや、そういうデータが集まっただけだった。捨てられた原因として脚部の配線がショートしていたけど、すぐに直すことができたし、その他の部分には全く欠損が見られなかった。
あのメモリー部分にもね」
そこで左藤は一息ついてコーヒーをすすった。
「ふう。僕の結論としては、シアンには何かしらのエネルギー体が宿っていて、それが人間らしい考えをもたらしているんじゃないかな。それのエネルギーが弱くなると本来のAIの口調になるんじゃないかと思っているんだけど」
「エネルギー体って一瞬、科学的用語っぽく聞こえますけど、胡散臭いことこの上ないですね。
幽霊でも取りついているっていうんですか?」
「まぁ実際に幽霊でも憑いているっていう方が、プログラムが発達したというより信じられる状況だと思うね。異常なしということは正常以上の値は出ないはずなんだ。この場合どっかしらに異常がある、特にメモリー部分が怪しいからそこに欠陥があった方が納得いくんだが、メモリーには記録が無いだけで機能としては問題なかったんだから」
「だから幽霊ね・・・」
シアンは充電器に横たわり考えごとをしていた。
あの日、左藤に拾われた日よりも前の記憶を思い出せないかと。
だが、いつも体の感覚を取り戻す前のふわふわとした感覚までたどり着くと、ぷっつりと糸が切れたかのように何も掴めなくなってしまう。その度に頭の中が非常にもやもとするのだ。
実際にはこの頭の中には思考を司るCPUもメモリーもなく、ただ視覚センサーなどの類が占拠しているだけなのだが。
「何か…。何か引っ掛かり始めているんだ…」
今までは泥の中を探るようであったのに、今は何か煌めいたものを見た気がする。
ほんの一時。刹那の瞬間。だが、また掴み切れずにシアンは眠りについた。
そう言って去ったのはシアンだった。
「あれ、口調変わってませんか?」
シアンがドアを出てすぐ、私は左藤に尋ねた。
「まぁそれは食べながらにしよう」
部屋を出て、また移動する。
例のごとく白い部屋へ着いた。
これまた別の部屋で、大きめのテーブルと椅子が六脚置いてあるだけだった。
見上げるとドアとは正反対の壁に横に細長い絵がかかっている。
と、おもいきや近くに寄ってみるとそれが窓だということに気づく。
あまりにも周りが白すぎるために、またその位置が高すぎるために、
空しか見えない窓は精巧な絵画のようだった。
「まぁ座ってよ。しばらくしたらマゼンタが食事を運んできてくれる」
座りながら、ふと今は何時なのだろうと思い上着のポケットから携帯を取り出し確認する。
左藤が腹が減ったと喚いただけあって、予想した通り時刻は十二時を少し過ぎたところだ。
全くなんて腹時計だ。
「ふむ。人が目の前で話をしようとしているのに携帯を出すとは流石現代っ子だね。
授業の代返でも頼んだのかい?」
「今時、点呼なんて取りませんよ。教室に入る時にカードキーをかざさないと本人がいても出席扱いにはなりませんから」
「ああじゃあそのカードキーを友人にすでに渡しておいて出席扱いにしてもらうためにメールをしたということだね?ああ、そんなことをしなくても今時の学生ならカード偽造くらいお手の物なんだろう」
「いや、だからそんなことはしないです。というかできませんって。普通に欠席になるだけですよ」
「何、君友達いないの?」
「・・・」
いったいどこからそんな考えに飛ぶのか理解できない。
否定の言葉を出そうとするも、一旦沈黙してしまったことで何も言いだせなくなってしまった。
簡単に言えば図星だった。いないというよりは作る意味がない。
どうせあの日から…。
「じゃあしょうがないから僕が出席扱いにしといてあげるよ」
「・・はい?」
「友達のいない可哀相なアサ君のために僕がハッキングしてあげまーす」
いきなりノートパソコンを取り出し、ものすごい速さでキーボードを叩き始める。
というかそのノートパソコンはどこから取り出したのかと突っ込みを入れたい所だったが、真っ白なボディだったのでどうせそこらへんに転がっていたのだろうということに気付いた。
何もないように見えたこの部屋にも実は色々と物が転がっていたようだ。
「いや、そんなことしなくていいですから!失敗したらどうするんですか!」
「えーもうおわっちゃったよ?」
「は?」
ガチャリ。
タイミングを見計らったかのようにマゼンタが部屋に入ってきた。
パスタを私達の前に並べ終わると、レストランの給仕のように後ろの方へ移動し立ち尽くす。
「お、今日はゴルゴンゾーラか」
左藤は湯気の上がるパスタをすすり始める。私も仕方なく食べ始めることにした。
「シアンはね。捨てられていたんだ」
おもむろに左藤は話を始めた。
「半年前の雨の日に。ゴミ捨て場に捨てられていたのを僕が拾ったんだ」
「・・それはシアンが変わっていることと何か関係があるんですか」
「君はせっかちだね。話はまだ始まったばかりじゃないか。とにかく、ここに連れてきて検査した。
それこそ頭のてっぺんから足のつま先まで。見てすぐにわかったことは、型はマゼンタより一つ前の世代で、AIとしてはマゼンタより少し劣るくらいだ。それなのに何故、あれだけの会話ができるのか。すぐに疑問に思ったさ。結果、世間一般的に売られているロボットと何も変わりがないということがわかった。いや、そういうデータが集まっただけだった。捨てられた原因として脚部の配線がショートしていたけど、すぐに直すことができたし、その他の部分には全く欠損が見られなかった。
あのメモリー部分にもね」
そこで左藤は一息ついてコーヒーをすすった。
「ふう。僕の結論としては、シアンには何かしらのエネルギー体が宿っていて、それが人間らしい考えをもたらしているんじゃないかな。それのエネルギーが弱くなると本来のAIの口調になるんじゃないかと思っているんだけど」
「エネルギー体って一瞬、科学的用語っぽく聞こえますけど、胡散臭いことこの上ないですね。
幽霊でも取りついているっていうんですか?」
「まぁ実際に幽霊でも憑いているっていう方が、プログラムが発達したというより信じられる状況だと思うね。異常なしということは正常以上の値は出ないはずなんだ。この場合どっかしらに異常がある、特にメモリー部分が怪しいからそこに欠陥があった方が納得いくんだが、メモリーには記録が無いだけで機能としては問題なかったんだから」
「だから幽霊ね・・・」
シアンは充電器に横たわり考えごとをしていた。
あの日、左藤に拾われた日よりも前の記憶を思い出せないかと。
だが、いつも体の感覚を取り戻す前のふわふわとした感覚までたどり着くと、ぷっつりと糸が切れたかのように何も掴めなくなってしまう。その度に頭の中が非常にもやもとするのだ。
実際にはこの頭の中には思考を司るCPUもメモリーもなく、ただ視覚センサーなどの類が占拠しているだけなのだが。
「何か…。何か引っ掛かり始めているんだ…」
今までは泥の中を探るようであったのに、今は何か煌めいたものを見た気がする。
ほんの一時。刹那の瞬間。だが、また掴み切れずにシアンは眠りについた。
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